囲繞地通行権を主張できる相手に制限はあるのか?

囲繞地通行権を主張できる相手に制限はあるのでしょうか?
今回は、不動産の賃借人にも囲繞地通行権が認められるのか等を解説します。

事例

Xは所有している土地を、甲地と乙地に分割して、それぞれ、AとBに賃貸した。
この甲地は、乙地だけでなくCの所有する土地にも囲まれる形で袋地となっている。
袋地である甲地の賃借人であるAは、囲繞地通行権を主張することができるのか?
また、主張できるとしても、誰に対して囲繞地通行権を主張できるのか?

回答:分割者の所有地だけを通行できる

まず、民法の規定を見てみると、 210条や212条に規定されています。

(公道に至るための他の土地の通行権)

第210条

  1. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
  2. 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
民法

(公道に至るための他の土地の通行権)

第212条

第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとにその償金を支払うことができる。

民法

賃借人が通行権を有するかについて

民法はその記載体系上、章ごとにテーマとする権利が分かれています。
210条と212条は「第3章 所有権 (第206条~第264条の14)」に含まれています。
このことから、囲繞地通行権は所有権に関する権利であるとされています。
したがって、所有者でなく賃借人であるAが通行権を主張することは一見難しそうです。しかし、賃借権に対抗要件が備わっている場合には、囲繞地通行権も適用されます。
ちなみに、賃借権の対抗要件は登記です。
そのため、借地上に自己の建物を所有する場合はその登記をしなければなりません。または、賃借権そのものを登記する必要があります。

誰の土地を通行できるかについて

次に、Aが主張できる通行権の範囲ですが、具体的な条文上の規定はありません。
しかし、類似する条文を見てみる限り、全く事情を関知し得ない第三者に負担を課すのは適切ではないとされています。

(公道に至るための他の土地の通行権)

第213条

  1. 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
  2. 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
民法

つまり、AがXやBの所有地を通行することはできると考えられますが、Cの所有する土地に関しては通行権を主張できないと一般的に解されています。

以上のように考えると、囲繞地通行権を主張できる相手には一定の制限があることが分かります。法律の解釈や適用は複雑ですが、適切な知識と理解を持って問題に取り組むことが重要ですね。

まとめ

囲繞地通行権を主張できる相手には一定の制限があります。
具体的には、所有権に関連する権利であるため、所有者でなくても賃借人が通行権を主張できる場合がありますが、その場合は対抗要件が備わっているかどうかがポイントです。また、通行権の範囲も重要であり、法律や判例に基づいて適切に判断する必要があります。総じて、法律に関する知識と理解が問題解決に不可欠であることが示されています。よく分からない場合は専門家に相談する事を推奨します。

最後に

今回は不動産の賃借人にも囲繞地通行権が認められるのか等について解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が道路について学びたい方の参考になれば幸いです。

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