境界訴訟の資料にはどんなものが使われるのか?

境界を確定させる最終手段は境界訴訟です。
もちろん協議によって平和的に解決することが最善策ですが、折り合いが付かない場合は裁判により争う以外に方法はありません。
今回は、境界訴訟における裁判資料について解説します。

事例

Aは広大な土地を所有している。
しかし、Aの祖父の代でいくつかの土地を売却しており、そのころから周辺土地の公法上の境界が不明確になっていた。
ある日、隣接地所有者であるBとの間で、境界をめぐって意見の対立が生じた。
Aは、境界確定訴訟を提起することにした。
Aは、裁判資料としてどのような資料を用意しておけばよいか?

回答: 不動産登記法14条地図が有力な資料

境界訴訟は公法上の境界を確定するための訴訟であり、高い客観性が求められます。裁判所は当事者の主張に加え、以下の資料を元に境界を確定します。境界訴訟には十分な準備が不可欠です。

不動産登記法14条地図

登記所に保管されている不動産登記法14条地図は、高い精度と証明力を持っています。
また、面積を明示できる「測量図」も資料になりますが、精度は14条地図に劣ります。

境界標

「境界標」とは、土地の境界を示すために設置される標識や構造物のことを指します。
たとえば、土地の角や境界線上には、コンクリートでできた杭が設置されている場合があります。このような杭や石があることで、土地の境界を明確に示すことができます。また、境界が紛争になった際には重要な証拠として活用されます。
また、地域によっては木製の杭が用いられることもあります。これらの標識は変形や腐食などの問題が発生する可能性もあるため、定期的に点検や保守が必要です。

地形

地形は、土地の境界を確定する際に重要な要素です。
特徴的な地形や地形変動は、土地の境界がどこにあるかを特定する際に役立ちます。たとえば、山や丘は自然な境界を形成し、川や湖は土地の境界を形成する場合があります。地形によっては、道路や小川などの人工的な構造物も境界を形成することがあります。これらの要素は、土地の所有権や利用権を定義し、特定の土地が誰に属しているかを確認するのに役立ちます。

人間の証言や古文書

人間の証言や古文書は、土地の境界を明らかにする際に非常に重要な情報源となります。
例えば、土地を長く所有している人が、その土地の境界がどこにあるかを口頭で証言することで、過去の境界線や状況を詳細に把握することができます。また、古い文書には土地の境界に関する記述や地図が記されていることがあります。特に、古い土地登記簿や家系図、所領記録などは貴重な情報源となり得ます。ただし、これらの情報は古くなるほど信頼性に欠けることがあります。したがって、公式な証明として裁判所に提出する場合は、証言や文書の信憑性を確認する必要があります。他の資料との矛盾がある場合や、証言者や記述者の信頼性に疑問がある場合は、その情報を使用することは難しいかもしれません。

筆界特定委員の調査結果

「筆界特定委員の調査結果」は、土地境界の特定を目的として設置された専門家の調査結果を指します。土地の境界や界址点の特定は、土地登記の手続きにおいて非常に重要で、筆界特定委員による調査結果は裁判所などで参考にされることがあります。

筆界特定委員による調査は、以下の手順に従って行われます。

  1. 面積の計測
    土地の面積を計測します。土地の所有者が異議を申し立てることなく調査を行い、土地の境界や面積が特定されます。
  2. 界址点の確定:
    土地の境界には、界址点(境界標、境界線の始点・終点)が設置されています。筆界特定委員は、界址点を特定し、境界線の始点・終点を確定します。
  3. 地形や周辺状況の調査:
    土地の周辺状況や地形なども考慮され、土地境界の特定に活用されます。
  4. 備考書の作成:
    筆界特定委員は、調査結果をまとめた備考書を作成し、公的機関に提出します。

筆界特定委員による調査結果は、当事者が準備する資料ではないため、必要な場合は土地登記簿などから調査結果を取得し、裁判所に提出する必要があります。なお、筆界特定委員による調査結果は裁判所での調査結果には絶対的な証拠とはされない場合がありますので、これらの資料を活用する際は、必ず他の資料と併用し、状況に応じて判断する必要があります。

まとめ

境界の確定には多様な資料が活用され、筆界特定委員の調査結果もその一つです。
特に不動産登記法14条地図や境界標、人間の証言や古文書は重要な要素です。ただし、これらの資料を活用する際は、その信憑性や裏付けを確認し、状況に応じて判断することが重要です。また、筆界特定委員による調査結果は参考になることがありますが、その結果には絶対的な証拠としての裁判力はないことを理解することも重要です。全ての情報源を活用し、公正な境界確定を目指しましょう。

最後に

今回は境界訴訟における有効な資料について解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が境界関係について学びたい方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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