売買契約締結後に境界係争が明らかになった場合は?
不動産の売買契約締結後に当該土地が係争地であることが判明した場合、どのような対処が可能なのでしょうか?
今回は、このようなケースにおける対処について法的な立場から解説します。
目次
結論:仲介業者および売主に責任を追及できる
不動産購入時には、仲介業者は売主と買主の間でバランスをとりながら、正確な情報を提供しなければなりません。
境界の争いがある物件を仲介する際には、その重要性が一層増します。
境界の問題は、将来の所有権や使用権に大きな影響を与える可能性がります。そのため、仲介業者には買主に事前に告知する義務があります。
例えば、買主が仲介業者を介して中古住宅を購入したケースで、後日、建物が隣地に越境していることが判明したとしましょう。
また、その事態は事前に仲介業者が知り得た情報であり、既にの所有者が境界に関して隣地所有者と係争状態に陥っていたとします。
このような場合、仲介業者が事前に境界係争があることを買主に伝えていれば、買主は事前にリスクを把握できていました。
当然、このような土地を購入しないという判断もできたでしょう。係争地などを好んで買い取る人間はそうそういません。
仲介業者がその事実を知っていながら情報提供を怠ったとすれば、仲介業者は善管注意義務に違反したことになります。
不動産仲介業者の事前告知義務
また、宅建業法では宅建業者に契約前の事前告知義務を課しています。(宅建業法35条1項)
この法令上の告知義務の中には境界に関する係争の有無は含まれていません。
しかし、解釈上、係争の有無は当然に告知すべき事項に含まれているものと解されています。
さらに、この告知義務は係争地であることが判明したのが売買契約締結後であっても免除されません。
このようなケースでは、買主は仲介業者に対して説明義務違反を理由として損害賠償を請求することが可能です。
民法上の規定
また、買主は売主に対して以下のように契約不適合責任を追及することが可能です。
第562条(買主の追完請求権)
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
民法
なお、この買主の追完請求権は、改正前の民法では瑕疵担保責任と呼称されていました。
瑕疵担保責任と追完請求権の最大の違いは、瑕疵担保責任では損害賠償請求請求しか請求できなった点です。瑕疵担保責任と比較して、追完請求権では買主の選択肢が大幅に増えました。
また、この条文では「修補」「代替物の引渡し」「不足分の引渡し」の3点しか記載されていません。しかし、この場合であっても契約の解除および損害賠償請求は問題なく可能です。
第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
民法
前二条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
まとめ
不動産の売買契約を締結した後に係争地が判明した場合、買主は仲介業者および売主に対して責任追及することができます。
特に、境界に関わる問題は将来の権利に影響を与える重要な事項であり、事前に明確にすることが重要です。
業者は事前告知義務があるため、これらの情報を提供しなかった場合には善管注意義務に違反し、買主は損害賠償請求を行うことができます。
不動産取引においては、これらの法的規定を理解することが重要です。
最後に
今回は売買契約締結後に境界係争が明らかになった場合ついて解説しました。
今回は以上で終わります。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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