行政書士は稼げない?統計データから見る分析

近年「行政書士は稼げない」という風潮をよく耳にします。
確かに、税理士や弁護士等のメジャーな士業と比較すると、行政書士はマイナーで地味な印象があることは否定できませんし、あまり荒稼ぎができるイメージも無い方が大半だと思います。
そこで、今回は統計資料に基づいて「本当に行政書士は稼げないのか」について分析したいと思います。

※今回の記事は真面目な記事を装った娯楽記事です。苦手な方はブラウザバックして下さい。

全国の行政書士事務所の売上等

というわけで、さっそく全国の行政書士事務所の売上の統計を調べてみましょう。
政府統計調査結果を纏めたサイトである「e-Stat 統計で見る日本」を見てみます。
こういった記事を書く際には非常にお世話になるサイトです。

さて、2021年の全国の行政書士事務所のデータは以下の通りです。

(総務省統計局「経済社会総合研究所」)

えぇ…?

全国の行政書士事務所の2021年の業界売上高は622億6千万円……?
ということは2021年の名目GDPの0.01%を行政書士事務所が賄っていることになります。(2021年名目GDPは515兆3,455億円)
しかも、1人当たりの売上は466万円なので、中堅サラリーマンくらいの年収くらいはあるわけです。もっとも、これは厳密には売上高のデータであって年収のデータではありませんが。

それなりに儲かっているじゃないですか…

ほんとぉ?と目を疑いたくなるような結果がいきなり出てしまいました。
世間一般的に言うほど悲観的な数値とはとても思えません。

なぜこのような結果になったのかについての考察

副業行政書士も一定数いる

おそらく行政書士は士業の中では比較的受かりやすい(勉強時間1000時間程度、受験資格無し)傾向にあるうえ、税理士等の試験に合格すれば無条件で取得できるボーナスもあるので、他の事業がメインで行政書士を副業でやっているケースも十分に考えられます。また、登録費や単位会の月会費もそこまで高くありません。とにかくライトに副業から始めやすい士業なのです。
そのため、行政書士の全体数の中で本気で行政書士1本のみで稼いでいる方は、思いのほか少ないのではないかと思います。
司法書士youtuberとして活躍されているカヨウマリノ先生も兼業で行政書士登録をされていますが、行政書士業務の売上は全くのゼロだと動画で公開されていました。

ちなみにカヨウマリノ先生は本業の司法書士で年間数千万円を稼いでいます。すごい。
もちろん、行政書士1本で本気で稼いでいる方の中には、この一人当たり売上高の倍くらいは稼いでいる方も多々いらっしゃるでしょう。

自分の場合は…まあ、聞かないでください。

そもそも登録だけしている人もいるのでは?

宅建士&行政書士&youtuberとして不動産業をされている棚田健大郎(健”太”郎ではなく健”大”郎が正しいです)先生は、主に不動産業で活躍されています。もちろん行政書士でも活躍されています。
棚田先生は「行政書士という資格は仕事ではない、武器だ」と断言しております。
棚田先生は行政書士という法律のプロたるネームバリューを活用して他の事業でもガンガン活躍をすべきだという趣旨の御発言をされています。

自分はこれが一番すんなりと納得がいきました。

つまり、行政書士に登録する最大のメリットは「名刺に行政書士と明記できる」ことなのですね。圧倒的な対外的信用力向上です。
このため、本業は建設業や宅建業や風営業で稼がれている方でも、行政書士という肩書を使うことによって信用が増し、営業力が増加するわけです。
前述した登録費や月会費もそこまで理不尽な負担ではないため、有資格者は使わない手は無いでしょう。

このため、信用力向上のために登録だけして実際には行政書士としての業務はしていない人も一定数はいるものと思われます。


さて、もうこれで今回の記事の趣旨は終わってしまいました。
ただ、これだけを見ても面白くないため、ついでに他の士業の売上も見てみましょう。

行政書士以外の全国の士業事務所の売上等

法律事務所(弁護士)の売上等

では、全国の法律事務所(弁護士)の売上等を見てみましょう。

こちらは文字通り桁が違いますね。業界売上高は5,299億2千万円です。単純にすごいですね。
しかも一人当たりの売上は1,136万円です。行政書士の2倍以上、流石は士業の王と言ったところでしょうか。
間違いなく全士業でもSティアの戦闘力です。

税理士事務所の売上等

次に税理士事務所の売上を見てみましょう。

なんと、業界売上高は弁護士を超えて最も高い1兆3771憶円です。
しかし、母数も圧倒的に多いため一人当たりの売上は936万円と弁護士よりは若干低くなっています。まあ、これは仕方がないでしょう。936万円でも十分にすごいです。

公認会計士事務所の売上等

次に、全国の公認会計士事務所の売上を見てみましょう。

出ました。
流石は古来より最も儲かる士業の地位を守り続けてきた公認会計士です。
業界売上高は5,251憶8千万円と弁護士よりは若干下がりますが、一人当たりの売上は1,750万円という破格の戦闘力を持っています。これは母数が少ない割に売上高が多いので当然の結果でしょう。流石は公認会計士としか言えません。
これは間違いなくS(+)ティアです。

社会保険労務士の売上等

次は社会保険労務士を見てみましょう。

こちらは業界売上高は1,714億1千万円です。一人当たり売上高は715万円です。まあ、世の中に法人が存在する限りは需要が絶えない業種なので、ここは太いですね。

特許事務所(弁理士)の売上等

次は弁理士です。

またしても目を疑いたくなる数字が出てしまいました。
業界売上高は1,806億9千万円と社労士より少し多いくらいですが、なんと一人当たり売上高が1,807万円で公認会計士を抜いてナンバーワンです。俄かには信じられません。
某ゆっくり資格解説系動画に洗脳されて稼ぎが薄い仕事なのだと思い込んでいました。
どうしてこんなことが?と考えたのですが、単純に母数があまりに少なすぎるんですね。
士業の中では珍しい理系資格なので、なり手がいないことが要因の一つなのかと思います。

司法書士事務所の売上等

次は司法書士事務所です。

これは何故か司法書士事務所単独のデータが存在せず、分類が「公証役場、司法書士事務所」となっていました。まあ、細かいことはいいでしょう。

こちらは業界売上高2,502億6千万円です。一人当たり売上高が825万円です。かなり高いですね。
しかし、個人的には勉強時間3000時間以上は要する難関資格なので、一人当たり売上高は最低でも1,000万円くらいは行って欲しかったな…というのが正直な感想です。とはいえ、明治時代の代書人制度を起源とする司法書士、行政書士、社労士(これは厳密に言えば行政書士から更に分岐したものです)の3大代書業の中では最大規模であることには変わりありません。

土地家屋調査士事務所の売上等

では最後に土地家屋調査士のデータを見てみましょう。

こちらは業界売上高1,062億9千万円、一人当たり売上高が699万円です。
これは妥当と思うか、少ないと思うかに分かれるかと思います。
自分は少ないのでは?と感じました。面積にもよりますが、確定測量1回につき大体30~40万円くらいの単価だし、筆界確定まで行うと100万円くらいが相場というイメージがあったからです。普通に1,000万円以上はあるものと思い込んでいました。

まとめ

こうしてみると、確かに行政書士は他の士業と比較すると市場規模も少ないうえ、一人当たりの売上高も少ないことが判明しました。
残酷な事実ですが、数字は嘘をつきません。

しかし、世間一般に言われる「全く食えない」という程に悪い結果でも無いかと思います。
寧ろ、中堅サラリーマン程度には稼げます。
パソコンとプリンターさえあれば自宅で開業でき、かつ、登録費用30万円程度で気軽に始められる事業なので、合格まで数年間の勉強時間を有する他の難関資格系の士業と比較すれば、遥かにコスパは良いかと思います。
それに、他士業はその難関さ故に人生を賭けて本気で挑む人が多いので、副業感覚でライトに始める人などほぼ皆無でしょう。これも他士業との売上高の差を生んでいる要因の一つではないかと思います。

また、行政書士youtuberの古川ヒカル先生のように、本気で睡眠時間以外の全ての時間を行政書士業務に集中すれば、十分に稼げる仕事ではないかと思います。

この動画はかなりモチベーションが上がるのでオススメです。

開業時にとあるベテラン先生から聞いた話ですが、最も稼げない士業は行政書士と言われるが、実は最も稼いでいるトッププレイヤーがいる士業も行政書士らしいです。進出できる範囲が広範なので、自分のやり方一つでいくらでも化けることができる仕事なのです。

もっとも、お金を取るか時間を取るかは人それぞれの価値観によって異なります。自分にとっての幸せとは何なのかをよく考えて今後の業務の資としていただければ幸いです。

※ちなみに海事代理士と不動産鑑定士の売上高のデータも探しましたが、見つかりませんでした。

最後に

今回は行政書士は本当に稼げないのかについて分析しました。
なかなかシビアな結果でしたが、諦めずに頑張っていきたいと思います。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が行政書士について学びたい方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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