行政書士の果たさなければならない義務│法的義務解説 その3(完結)

行政書士には、果たさなければならない職務上の法的義務が存在します。
これらの義務を果たさなかった場合、懲戒を受ける可能性もあります。
今回は、前回から引き続き、行政書士の義務について解説します。
ちなみに、法的義務解説シリーズはこれが完結編です。
【前回の記事】
行政書士の果たさなければならない義務│法的義務解説 その1 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
行政書士の果たさなければならない義務│法的義務解説 その2 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

会則の遵守義務

こちらの会則の遵守義務に関しては、法令上以下のように定められています。

(会則の遵守義務)
第13条 行政書士は、その所属する行政書士会及び日本行政書士 会連合会の会則を守らなければならない。

行政書士法

会則遵守義務の意義

行政書士は、所属する都道府県行政書士会や日本行政書士会連合会の会則を厳守することが求められます。これらの団体は法定行政書士団体の一部であり、会則には行政書士の業務規律を確立するための基本的な規定が含まれています。行政書士の使命を果たすためには、これらの規則に従うことが不可欠です。同様に、登記即入会制をとる「行政書士法人」も同じ規定に拘束されます。
ただし、会則事項には異なる法的意味があります。一部の規定は強制力を持ち、これらを守らないことは法的な違反となります。しかし、会費の納入などの規定は所属書士会内での管理が行われ、是正される可能性があります。また、「品位保持」などの規定は責務や努力義務として位置づけられ、書士会役員による指導が重要です。
行政書士としての信頼性や専門性を保つためにも、会則を遵守することは非常に重要です。これにより、我々はより高い専門性を持ち、社会に貢献することができます。

守るべき会則事項

各行政書士会の会則事項の遵守

各行政書士会の会則には以下のような事項が含まれます。

  1. 入会金や会費の納入義務
  2. 名義の貸し借りの禁止
  3. 業務における会員証の携行義務
  4. 業務上の誠実さや公正性の責務
  5. 日本行政書士会連合会の報酬額表の事務所掲示
  6. 業務報酬の領収証の交付と保存
  7. 使用人や従業者の採用・解職届提出
  8. 使用人や従業者に対する指導監督義務
  9. 役員としての会議協力義務
  10. 業務禁止処分の届出

会費納入の滞納や長期間の滞納には綱紀委員会が対応し、業務継続意思がないとみなされる場合があります。

日本行政書士会連合会の会則事項の遵守

日本行政書士会連合会の会則にも以下のような事項が含まれます。

  1. 変更登録諸証明等に対する手数料の納入
  2. 名義の貸し借りの禁止
  3. 業務上の誠実さや信用確保の責務
  4. 事務所に掲示する報酬額表の様式

このうち、2、3、4は単位書士会の規定と競合する場合があります。

研修に参加する義務

研修参加義務に関しては、法令上以下のように定められています。


(研修)
第13条の2 行政書士は、その所属する行政書士会及び日本行政書士会連合会が実施する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。

行政書士法

業務研修の必要性

長い間、行政書士の業務研修は各地域の行政書士会や日本行政書士会連合会によって開催されてきました。なぜなら、行政書士の業務は広範囲にわたるため、業務の拡大を望む書士にとって研修は必要不可欠だからです。月刊機関誌「日本行政」には、研修に関する情報が定期的に掲載されています。

一般倫理研修の義務化

全ての行政書士は、令和5年から一般倫理研修の受講が義務化されました。これは、職務上請求書を不正使用する行政書士が後を絶たないことから新たに設けられた義務です。なお、令和5年以降の新規登録者は登録式の一環として一般倫理研修会の受講が実施されることも多いです。また、この研修会の受講後には受講証明書が付与されますが、この証明書は決して紛失してはいけません。この証明書を紛失すると、職務上請求書を新規で購入することができなくなります。そのため、また一から受講をし直すしかありません。

法務基盤研修の重要性

司法改革時代に入り、行政書士には法務基盤研修が求められるようになりました。これは、民事契約書類の代理作成など、法務サービス能力の向上を目指すものです。日本行政書士会連合会は研修センターを設立し、法務基盤研修を実施しています。この研修では、判例を含めた紛争法律関係に関する法解釈能力の向上が求められます。

特定行政書士研修の重要性

特定行政書士は、行政不服申立て代理業務を行うために特別な研修を受ける必要があります。この研修は、行政不服申立てに関する法令や実務、業務倫理などを対象としています。入管の申請取次行政書士も同様に、所定の研修を修了する必要があります。

総じて言えば、研修は行政書士の専門性や能力向上に不可欠です。常に最新の情報や法令改正に対応するためにも、積極的に研修に参加し、自己研鑽を怠らないことが重要です。

最後に

今回は行政書士の法的義務について解説しました。
これで全ての法的義務について解説が完了しました。長いシリーズでしたが、無事完走することができました。ご愛読いただいた皆様、ありがとうございました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が行政書士の業務について学びたい方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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