経営事項審査とは?建設業者必読の公共工事参入マニュアル

建設業者が公共工事に参加するには、厳格な審査が必要です。
その審査の一翼を担うのが「経営事項審査」、通称「経審」です。
今回は、この経営事項審査について詳しく解説していきます。公共工事の発注者や審査項目、結果の通知に至るまで、建設業者にとって不可欠なプロセスを明らかにしていきましょう。

経営事項審査の概要

経営事項審査とは、建設業者が国や地方公共団体からの公共工事の発注を受ける際に必要な審査プロセスを指します。この経営事項審査は、「経審」と略され、その厳格な審査に合格することが求められています。

公共工事とは、主に国、地方公共団体、特殊法人からの発注を指します。民間企業や個人からの発注とは異なります。
経営事項審査は、これらの発注者から直接請け負おうとする建設業者に適用されます。そのため、下請負人として参加する場合には必要ありません。

公共工事の発注者は、競争入札に参加する建設業者に対して資格審査を行います。
この資格審査では、「客観的事項」と「発注者別評価」が点数化されます。経営事項審査は「客観的事項」の審査に当たり、建設業法に基づき建設業許可に係る許可行政庁によって実施されます。

経営審査事項の審査方法

経審では、国土交通大臣が定めた4つの項目に基づき審査が行われます。これには経営規模(X1、X2)、技術力(Z)、その他の審査項目(社会性等)(W)、経営状況(Y)が含まれます。各項目はそれぞれ評点が算出され、最終的に総合評定値 (P) が計算されます。この総合評定値は、経審の結果を示す指標であり、各要素に係数が設定され、その合計が評価基準となります。
計算式は以下の通りです。
(P)=0.25X1+0.15X2+0.2Y+0.25Z+0.15W
特に経営規模と技術力と経営状況の配点が非常に大きいことが分かりますね。

経営事項審査の総合評定値 (P) は審査基準日から1年7か月有効です。事業年度ごとに経審を受ける必要があります。これにより、建設業者は絶えず最新の審査結果を保持し、公共工事に参加するための資格を維持することが求められます。

公共工事とは?

まず、公共工事とは何かについての明確な定義を把握することが肝要です。

公共工事は、その性質上、公共性の高い施設や工作物に関わる建設工事を指しています。その発注主は国、特殊法人、または地方公共団体です。この厳格な範疇は建設業法施行令第15条により具体的に明示されています。

  1. 鉄道、軌道、索道、道路、橋、護岸、堤防、ダム、河川に関する工作物、砂防用工作物、飛行場、港湾施設、漁港施設、運河、上水道又は下水道
  2. 消防施設、水防施設、学校又は国若しくは地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所若しくは試験所
  3. 電気事業用施設(電気事業の用に供する発電、送電、配電又は変電その他の電気施設をいう。)又はガス事業用施設(ガス事業の用に供するガスの製造又は供給のための施設をいう。)
  4. 前各号に掲げるもののほか、紛争により当該施設又は工作物に関する工事の工期が遅延することその他適正な施工が妨げられることによって公共の福祉に著しい障害を及ぼすおそれのある施設又は工作物で国土交通大臣が指定するもの

公共工事の受注には経営事項審査だけでは不十分

経審を受けたとしても、これだけでは公共工事の受注が確定するものではありません。公共工事においては、一般的には「競争入札」が行われ、発注先が決まります。しかし、この競争入札に参加するためには、建設業者は各発注者に対して「入札参加資格」を有している必要があります。

建設業者が公共工事の入札参加資格を取得するためには、各発注者に対して入札参加資格申請を行う必要があります。入札参加資格は発注者ごとに異なり、資格を得るかどうかの審査は発注者が実施します。

発注者は、「客観的事項」である経審の評点(「総合評定値」(P))と「発注者別評価」の総合点に基づいて、建設業者を格付けします。この格付けにより、入札に参加できる工事の規模が変動する仕組みとなっています。

経営状況分析の概要

「経審」は2つの評価によって構築され、これらの評価の結果に基づく数値を用いて、「経審の評点(「総合評定値」(P))」が計算されます。

(1)経営状況分析
(2)経営規模等評価

「経営状況分析」結果 + 「経営規模等評価」結果 = 「総合評定値」(P)

前述の通り、経審は国土交通大臣によって定められた4つの項目に基づいて審査が行われます。
この中で経営状況(Y)に焦点を当てた分析が「経営状況分析」です。一方で経営状況(Y)以外の客観的事項(経営規模(X1、X2)、技術力(Z)、その他の審査項目(社会性等)(W))に対する評価は「経営規模等評価」とされます。
なお、これらの項目は更に以下のように細分化されます。

経営規模(X1、X2)

  • 工事種類別年間平均完成工事高
  • 自己資本額平均利益額

技術力(Z)

  • 工事種類別の技術職員数
  • 工事種類別年間平均元請完成工事高

その他の審査項目(社会性等)(W)

  • 労働福祉の状況
  • 営業継続の状況
  • 防災協定締結の有無
  • 法令遵守状況等

経営状況(Y)

  • 経営状況分析

経営状況分析の審査項目

次に、経営状況分析の審査項目を詳しく見ていきましょう。
経営状況分析には計4つの審査項目が存在し、それぞれが2つの分析指標で構成され、合計で8つの要素が評価されます。
経営状況分析は主に建設業者の経営状態を会計の観点から評価するものです。

  1. 負債抵抗力
    純支払利息比率 X1
    負債回転期間 X2
  2. 収益性・効率性
    総資本売上総利益率 X3
    売上高経常利益率 X4
  3. 財務健全性
    自己資本対固定資産比率 X5
    自己資本比率 X6
  4. 絶対的力量
    営業キャッシュフロー X7
    利益剰余金 X8

経審の総合評定値(P)を算出して建設業者に通知するのは、許可行政庁である国土交通大臣又は都道府県知事です。経営状況分析の審査機関は、国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関が担っています。

経営状況分析の注意点

建設業者は、登録経営状況分析機関の中から選択し、経営状況分析の申請を行います。どの分析機関を選んでも結果は同様ですが、各分析機関ごとに申請のプロセスや手数料などに差異があるため、経営状況分析の申請時にはそれぞれの機関に相談しましょう。

さらに、建設業者が許可行政庁に対して総合評定値(P)を請求する場合は、経営状況分析結果通知書の提出が必要となります。そのため、事前に経営状況分析を受け、結果通知書を取得しておくことが必須です。

経営規模等評価の審査項目

次に進んで、経営規模等評価の審査項目に注目します。経営規模等評価には、経営規模(X1、X2)、技術力(Z)、その他の審査項目(社会性等)(W)に関する審査項目が存在します。

  1. 経営規模
    工事種類別年間平均完成工事高 X1
    自己資本額・平均利益額 X2
  2. 技術力
    工事種類別技術職員数 Z
    工事種類別元請完成工事高 〃
  3. その他の審査項目(社会性等)
    労働福祉の状況 W
    建設業の営業継続の状況 〃
    防災協定締結の有無 〃
    法令遵守の状況 〃
    研究開発の状況 〃
    建設機械の保有状況 〃
    ISOの取得状況 〃
    若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況 〃
    知識及び技術又は技能の向上に関する建設工事に従事する者の取組の状況 〃

経営状況分析の審査機関は、国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関でしたが、対照的に経営規模等評価の審査は、国土交通大臣または各都道府県の知事が担当します。国土交通大臣または都道府県知事は、独自の基準に基づいて経営規模等を精査し、その結果をもとに経営事項審査(経審)の総合評定値(P)を算出し、建設業者に通知します。

最後に

今回は経営事項審査の概要について解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が建設業許可について学びたい方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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