農振除外の手続きを解説!農用地区域の土地を農業以外の用途に利用するには?

農振除外とは、農業振興地域整備計画に基づいて農用地区域に指定されている土地を、農業以外の用途に利用する場合に、その土地を農用地区域から除外する手続きのことです。
農用地区域内の土地は、農業上の利用を確保するために定められた区域であるため、原則として農業以外の用途に転用することができません。しかし、社会的、経済的な事情等やむを得ず農業以外の用途へ利用する必要がある場合は、農振除外により、その土地を農業以外の用途に利用することができます。
今回は、農振除外手続きに必要となる申請書の記載方法について解説します。

農振除外が認められる場合

これには、次の要件をすべて満たしている必要があります。

  1. その土地を農用地等以外の用途に供することが必要かつ適当であって、農用地区域以外に代替すべき土地がないこと。
  2. 農用地区域内における農用地の集団化、農作業の効率化その他土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと。
  3. 農用地区域内における効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農用地の利用の集積に支障をおよぼすおそれがないこと。
  4. 農業用用排水施設や農道など農用地等の保全又は利用上必要な施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないこと。
  5. 土地基盤整備事業(ほ場整備事業、かんがい排水事業など)等の工事が完了した後8年以上経過した土地であること。

農振除外の手続き

手続きの流れは、以下の通りです。

  1. 土地所有者は、市に農用地利用計画の変更の申し出をします。
  2. 市は、申し出を受けて、除外の必要性と上記除外の要件を検討し、関係農業団体等の意見を聞きます。
  3. 市は、整備計画の変更の必要があると判断した場合、整備計画の変更案を縦覧公告(30日間)します。
  4. 縦覧期間中に異議申立がなかった場合、市は、整備計画の変更案について県に協議します。
  5. 県は、整備計画の変更に異議がない場合には、これに同意します。
  6. 県が同意した場合、市は、整備計画の変更について決定公告をします。

農振除外の注意点

農振除外の手続きには、時間がかかります。最低でも1年程度は時間が掛かることを覚悟しましょう。また、認可の通知があるまでは事業等に着手しないでください。
農振除外が認可されたとしても、農地転用許可等の他法令に基づく許可等が必要な場合は、それらの許可等も取得する必要があります。

農振除外の手続きに必要な書類

変更申出書

変更申出所の書式は自治体によって異なります。必ず申請先の書式を確認しましょう。
今回は比較的分かりやすい東広島市の書式を参考にして解説します。

まずは簡単に書式の外観を確認してみましょう。

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作成要領

次に記載すべき項目を一つずつ埋めていきます。

①申請日

ここはお約束ですが、空欄のまま提出して下さい。

②申出人(土地所有者)の氏名、住所、連絡先

ここには申請者の情報をそのまま転記します。努めて番地等を省略せずに住民票に記載の通りに転記しましょう。
また、申請者が複数いる場合は欄を追加して記載しましょう。
行政書士等が代理して申請する場合は、自治体によっては代理人の情報も記載を求められる場合があります。事前に自治体に確認しましょう。

③変更しようとする土地の所在地、地番、地目、面積、除外面積、変更後の土地利用計画

所在地、地番、面積は土地の登記簿に記載されている事項をそのまま転記しましょう。
除外面積とは、申請する土地のうち、何㎡を農振除外してもらいたいのかを記載します。転用目的を達成するための必要最小限の面積を記載しましょう。
変更後の土地利用計画は、何のために転用したいのかの目的を端的に記載します。(例:農業用倉庫 等)

また、ほ場整備実施地区の場合は地区名、工事完了年度を記載します。所轄の農業委員会や農政課等に確認しましょう。
集落協定の有無についても同様です。

④変更しようとする土地に係る生産状況及び権利関係(所有権以外の権利者)

ここには耕作者の氏名住所と農地に設定している使用収益権を記載します。
ここでいう使用収益権とは、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借権を指します。条件付所有権移転の仮登記や抵当権は含まれません。
また、当該土地で耕作者が生産している作物の種類も記載します。
耕作者と土地所有者が同一人物の場合は、耕作者の情報は空欄とします。耕作者が土地所有者と異なる場合は、耕作者の転用に関する承諾書が必要です。
つまり、この欄は当該農地を借りて農業をしている人が転用に同意している旨を証明するためのものです。

⑤変更土地利用計画の概要

ここには転用後に何をしたいのかを記載します。

用途・施設等

農家・分家住宅 、一般住宅 、駐車場 、資材置場の項目で当てはまるものがあれば☑を入れます。
どれにも当てはまらなければ、その他に☑を入れ、カッコ内に具体的に記載します。

規模、構造、延床面積

ここには具体的な築造計画を記載します。
例えば、分家住宅を築造したい場合は、以下のような記載になります。

住宅1棟
木造瓦葺2階建、建築面積200㎡
(1階:建築面積200㎡、2階:建築面積150㎡)
車庫1棟(2台分) 30㎡、
植栽等 70㎡
合計所要面積 300㎡

このように、ある程度の具体的な築造計画が無ければ記載が難しいです。よく分からない場合はハウスメーカーに相談してみましょう。

変更後の使用者(転用事業予定者)

ここには転用者の住所氏名、申請者との関係を記載します。
具体的には以下のような書き方になります。

住 所 ○○市○○町△△××番地
氏 名 東広島 一郎
(申出人との関係 息子 )

工事計画

ここには工事の始期と終期を記載します。具体的に令和 ○○ 年 ○ 月 ○ 日 ~ 令和 ○○ 年 ○ 月 ○ 日という書き方が望ましいですが、それが難しい場合は「転用許可取得後~〇カ月」という書き方にしましょう。

利用開始予定時期

ここには先述の工事計画で記載した工事終期以降の時期を記載します。当然ですがここは概算で令和 ○○ 年 ○ 月頃というような書き方で問題ありません。

⑥申出地を除外・変更する理由

ここには申請の具体的な理由を記載します。特に、その必要性をアピールすることが重要です。ただ単に「もういらないから売りたい」というような曖昧な理由ではいけません。
具体的には以下のような書き方をします。

息子の一郎は現在○○市に妻と子2人とともに借家で生活しております。しかし、家族4人での生活がますます手狭に感じられるようになりました。また、私自身も高齢となり、ここ数年は農業に従事することが難しくなり、田畑については他の方に貸し出して耕作していただいております。息子も故郷に戻り、少しずつ農業を再開していくことを考えております。そのために、私が所有している土地に、息子たちが快適に住むための新しい住居を建設することを検討しております。

⑦申出地を変更しても周辺農地の利用に支障がないと判断している理由

ここには転用後の周囲への影響の有無を記載します。また、影響が甚大ではないことをアピールすることが重要です。
具体的には以下のような書き方をします。

当該申出地は、ほ場整備実施地域に位置しておりますが、既に工事完了後8年以上が経過しております。加えて、当該地は集団農地の端に位置しており、また、集落にも接続されているため、農用地の集団性は保たれており、周辺農地の農業利用にも支障が生じておりません。また、賃借人の承諾も得ており、さらには息子が積極的に営農に取り組むことにより、耕作の継続性も確保されております。今後は個人住宅の建築を予定しており、用排水施設の整備も計画しております。これにより、周辺の土地改良施設に一定の影響が生じるかもしれませんが、その範囲は軽微なものと考えております。

⑧当該申出地を選定した理由

ここには転用地がその場所でなければならない必要性をアピールします。
具体的には以下のような書き方をします。

当該申出地は、私の自宅の横に位置しており、集落にも直結しております。これにより、私の営農活動においても手伝いが容易に行えます。代替地の検討を行った結果、農用地区域以外の土地も検討しましたが、要件を満たす適切な土地が見当たらず、当該申出地以外に適した場所が見つかりませんでした。当該申出地は、私が耕作している農地にも近接しており、農作業の効率化や農業利用に非常に効果的です。また、この土地がなければ、住宅の建築も難しい状況です。これを踏まえて、この度の申請地とさせていただきました。

⑨代替地の検討結果

ここには交渉の内容及び結果、交渉が不調に終わった理由等を記載します。
検討した代替地については、図面、番号、所在地、所有者、地目、面積、検討の経緯及び結果を記載します。
検討の経緯については、主に面積や交通の便から事業目的を達成できない理由を列挙します。
具体的には以下のような書き方になります。

1 当該地は、住宅を建築するには面積的にも小さく、また道路にも接しておらず、建築に必要な要件を満たす土地ではないため、建築が困難である状況です。
2 当該地は、現在の住宅敷地の向かい側に位置しており、計画を進める上でも好都合な場所ではありますが、地権者との条件面で折り合いがつかないため、計画を断念せざるを得ませんでした。

⑩関係法令の許認可手続きの状況

ここには関係する法令の許可等の必要の有無について記載します。
なぜなら、農地転用には農地法以外にも都市計画法や、宅地造成規制法等の様々な法令が複雑に関係しているため、農地法上の許可のみを取得しても意味がないことが多いからです。
特に、開発行為が関係する場合、開発許可と農地転用許可は同時申請、同時許可の原則が取られています。

最後に

今回は農振地域の概要、農振除外手続きに必要となる申請書の記載方法について解説しました。
もちろん、この申請書は始まりの一歩に過ぎません。これ以外にも多種多様な添付書類が必要です。しかし、それらを一度に全て解説するには記事の尺がいくらあっても足りないため、別の記事で解説していきたいと思います。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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