開発許可の準備段階の概要:事前相談から現地協議まで
開発許可は準備が命と言っても過言ではないほど、準備段階が長いものです。
今回は開発許可申請の準備段階にあたる事前相談から現地協議会までの流れについて解説します。
なお、この内容はあくまでも一般的な内容です。細部は各自治体の定める条例により異なる場合があることを御了承下さい。
目次
事前相談
まず、市役所や都道府県庁の都市計画課など、開発許可担当部署に相談に行きます。
開発の相談は、予約が必要な場合や、平日の午前中しか相談を受け付けていないところもあります。事前に電話等で確認するようにしましょう。
事前相談をせずに手続を始めてしまうと、要件に合わずに、そもそも開発許可ができないという場合もあります。
事前に開発の計画を相談し、許可の要否について確認してから手続を始めてください。
市街化区域であっても、開発する場所まで進入する道路が狭過ぎて許可ができない場合もあります。
市街化調整区域の場合は、基本的に建築が制限されていて要件が厳しいため、必ず事前相談が必要です。
開発事前協議の手続
開発許可の手続は、許可が出た後に造成工事が発生します。そのため、騒音や安全対策など少なからず周辺に住んでいる人たちにも影響があります。何の説明もなく工事が始まってしまうと、思わぬトラブルにつながります。
開発事前協議の手続とは、開発許可の手続を進める前に、開発する場所の周辺の住民などに開発計画を事前にお知らせし、説明をすることによって、紛争やトラブルを未然に防ぐために設けられている制度です。
なお、自治体によっては、開発事前協議の手続の制度がない場合もあります。
開発行為予定標識の設置
事前相談で開発許可の見込みがあると確認できたら、現地に開発行為予定標識を立てます。
この標識の設置については、そもそも必要としない自治体も存在します。事前に所轄の役所に確認を取るようにしましょう。
開発行為予定標識とは、開発計画の概要を書いた予定の看板のことです。
開発行為予定標識を設置してから14日間経過しないと、その後に提出する「開発計画事前協議申請書」を提出することができません。手続を急ぐのであれば、早めに現地に開発行為予定標識を立てておきましょう。
設置後は、近景と遠景で予定看板の写真を撮影しましょう。近景写真は看板の記載内容が分かるように接写します。遠景写真は設置場所が開発対象地域であることが分かるように地域全体を含めた「引きアングル」で撮影します。
この写真も後に提出する資料に必要になります。忘れないようにしましょう。
開発行為予定標識設置報告書の提出
開発行為予定標識の設置を義務付けている自治体では、開発行為予定標識を設置した後は設置した旨を報告しなければなりません。
予定標識設置報告に必要な書類は主に以下の通りです。
- 開発行為予定標識設置報告書
- 開発行為予定標識を撮影した写真(遠景、近景)
- 開発区域位置図(ゼンリン地図など)
近隣住民への説明
開発する場所の周辺に住む方々が、開発計画について何も知らない間に工事が始まってしまうと、工事の時期・時間帯や騒音等に対するクレームに繋がり、工事や手続が遅れてしまう場合もあります。
事前に開発計画を周知して説明し、計画に関する疑問や不安を解消してから手続を進めるようにしましょう。
説明範囲の対象としては、開発する土地から半径15m以内にかかる土地や建物の所有者、管理者、居住者です。半径15m以内に1部でも含まれる土地や建物の関係者に説明するようにしましょう。事前説明の方法は、原則として面談により行います。そのため、対象者を個別に訪問して説明します。
開発の規模が大きい場合などは、自治会等から住民説明会の開催を求められる場合もあります。
事前説明の時に必要な書類の一例は、主に以下のものです。
- 開発計画概要書
- 開発区域位置図
- 現況図
- 土地利用計画図
- 造成計画平面図及び断面図
このように、住民が開発計画の内容を知ることができる書類を準備する必要があります。
これらの図面は、工事担当業者や、土地家屋調査士等に作成してもらいましょう。
注意すべきこと
説明の対象となる近隣住民は、開発の専門知識を持っていることはほぼありません。基本的には図面に基づいて計画内容を簡潔に説明するようにしましょう。
それよりも、開発工事で何ができるのか、工事の期間、工事の時間帯、騒音等、生活に直接影響があることについて重点的に説明するようにしましょう。
なお、上記の項目とは別に通風や車両の通行規制等の独自の説明項目を定めている自治体もあります。事前に確認しましょう。
事前説明報告
全ての事前説明が終わった後、その旨の報告が必要です。
事前説明報告に必要な書類は、主に次のとおりです。
- 開発計画概要書
- 開発区域位置図
- 現況図
- 土地利用計画図
- 造成計画平面図及び断面図
- 事前説明報告書表
- 事前説明報告書裏
- 説明対象の区域図
全ての事前説明が終わった後、開発担当の課に提出します。 この事前説明報告書は、後述する 開発計画事前協議申請をする前までか、申請と同時に提出する必要があります。
開発計画事前協議申請書の提出
標識を設置してから14日以上経過した後、近隣への事前説明を終わらせて、事前説明報告書を提出し、または提出と同時に開発計画事前協議申請をすることができます。
開発計画事前協議申請に必要な書類は、主に次のとおりです。
- 開発計画事前協議申請書
- 開発計画説明書
- 開発区域位置図
- 公図
- 現況図
- 土地利用計画図
- 造成計画平面図及び断面図
- 給排水計画平面図
図面については、新たに作成する必要はなく、前述の事前説明に用いたものをそのまま使うことができます。
必要な書類を準備して、開発担当課に提出します。
開発計画事前協議会
役所において、提出された事前協議申請書をもとに、関係する課の担当者が集まって会議をします。関係する課は、主に開発担当の課、道路・下水道担当の課、農業施設の担当の部署等です。その会議の中で、開発計画の内容を説明して意見を聞きます。
現地協議会
前述の開発計画事前協議会は、役所で開かれたのに対し、現地協議会は開発する場所で、提出された事前協議申請書をもとに、関係する課から意見を聞きます。
現地でしか分からない課題点などを協議し、設計上の注意点等を聞き取ります。
現地協議会まで終われば、一旦、開発事前協議手続は完了です。
開発事前協議手続で集まった関係する課からの意見をもとに、設計図面などを修正して、関係する課と個別に32条協議を始めていきます。
自治体によっては、開発事前協議の手続がない開発許可申請の場合もあります。その場合は、役所担当者が現地確認をするのは開発造成工事が終わった後、つまり完了検査のときです。
最後に
今回は開発許可の準備段階について解説しました。
開発許可を自分で申請する場合は、相当な業務量と精神的負担があることを覚悟しましょう。
もし、自分では対処しきれないと感じた場合は、専門とする行政書士等に相談することを推奨します。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が開発許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせフォームからいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)