引続き農業経営を行っている旨の証明書とは?
引き続き農業経営を行っている旨の証明書は、過去から現在まで継続して営農をしていることを農業委員会が証明する文書です。
この証明書が何のために必要なのか、知らない方も多いかと思います。
そこで今回は引続き農業経営を行っている旨の証明書について解説します。
引続き農業経営を行っている旨の証明書の目的
この証明書の目的は、簡単に言えば節税です。
まず、農地における贈与税について解説します。
営農者が農地を推定相続人の1人に贈与した場合は、受贈者が当該農地で農業を営んでいる限り贈与税の納税が猶予されます。
【根拠法令:租税特別措置法第70条の4】
このため、受贈者の営農の継続を証明する必要があるのです。
なお、この特例は3年毎に引き続き継続届出書を税務署に提出することで何度でも受けられます。
また、猶予された贈与税額のことを農地等納税猶予税額といいます。
この農地等納税猶予税額は、受贈者または贈与者のいずれかが死亡した場合、納税が免除されます。
ただし、贈与者の死亡により農地等納税猶予税額の納税が免除された場合には、特例の適用を受けて納税猶予の対象になっていた農地等(「特例農地等」といいます。)は、贈与者から相続したものとみなされて相続税の課税対象となります。
証明書の取得方法
農業委員会に証明願を提出することで取得することが可能です。
証明願は申請者の氏名住所と証明を受けたい期間を記載するだけです。
発行されるまでに約2週間ほどかかりますので、必要な場合は計画的に申請しましょう。
なお、広島市の証明願は以下のような定型になっています。
注意すべきこと
受贈者の資格要件
この制度を利用するにあたり、受贈者は以下の条件の全てに該当しなければいけません。
- 贈与を受けた日において、年齢が18歳以上であること。
- 贈与を受けた日まで引き続き3年以上農業に従事していたこと。
- 贈与を受けた日後、速やかにその農地によって農業経営を行うこと。
- 農業委員会の証明の時において、効率的かつ安定的な農業経営の基準として、次のいずれかに該当する農業経営を行っていること。
① 農業経営基盤強化促進法第12条第1項の規定による農業経営改善計画の認定を受けていること。
② 農業経営基盤強化促進法第14条の4第1項の規定による青年等就農計画の認定を受けていること。
③ 農業経営基盤強化促進法第6条第1項に規定する基本構想に定められた効率的かつ安定的な農業経営の指標を満たしていること。
一括して贈与を受けなければならない
この制度を利用するためには、分割ではなく一括で農地の全部を受贈しなければいけません。
猶予が取り消される条件
以下の条件が発生したときは、猶予されていた贈与税を納付しなければなりません。
- 贈与を受けた農地等について、譲渡等があった場合
- 贈与を受けた農地等に係る農業経営を廃止した場合
- 受贈者が贈与者の推定相続人に該当しないこととなった場合
- 継続届出書の提出がなかった場合
- 担保価値が減少したことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかった場合
- 都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合
- 特例農地等が都市計画の変更等により特定市街化区域農地等に該当することとなった場合
- 準農地について、この特例の適用を受けた場合で、申告期限後10年を経過する日までに、農業の用に供されていない準農地がある場合
第8項目の準農地とは、農用地区域内にある土地で農業振興地域整備計画において用途区分が農地とされているもののうち、10年以内に農地に開発して農業の用に供することが適当であるものとして市町村長が証明したものをいいます。
総じて、受贈した農地を手放したり農業をやめる際には猶予期間が終了すると考えると分かりやすいですね。
最後に
今回は引続き農業経営を行っている旨の証明書について解説しました。
なかなか使用する機会が限られる書類ですが、このような制度があることをあらかじめ知っておくことは大切ですね。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地のことについて学びたいと考えられていた方の参考になれば幸いです。
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせフォームからいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)