遊休農地とは?
遊休農地とは、かつては耕作に供されていたが現在は耕作されていない農地のことです。
また、耕作はされていても利用が不十分で農地として機能不全に陥ってる場合も含まれます。
これらは耕作放棄地とも呼ばれることがありますが、意味は同じです。
農地法は、農地の効率的な利用を促進することを目的としています。
そのため、遊休農地が発見された場合は所有者等に指導・勧告がされる場合があります。
また、最悪の場合は農地が没収される恐れもあります。
今回は、遊休農地に関する一連の行政の対処の流れについて解説します。
目次
遊休農地に対する行政の対処の流れ
農業委員会の利用状況調査
農業委員会は、年1回は地域内の農地の状況を調査することが義務付けられています。
これは通称「農地パトロール」と呼ばれているものです。
また、この年1回の調査とは別に、必要があればその都度調査をすることができます。
【根拠法令:農地法第30条 1項及び2項- Wikisource】
この調査の結果、耕作がされていないと判断された農地は遊休農地に指定されます。
農地の所有者または利用者への指導
調査の結果、耕作不十分と判断された場合、所有者に利用増進のための指導がされます。
なお、その農地の賃借人等がいる場合は、その者も指導の対処となります。
【根拠法令:農地法第30条 3項- Wikisource】
ここで指導の対象となる農地とは、法令上、以下の2種類が挙げられます。
1 現に耕作の目的に供されておらず、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地
2 その農業上の利用の程度が周辺の地域における農地に著しく劣っている農地
他人の遊休農地に対して指導を求めることが出来る
遊休農地を放置した場合、周辺の農地にも悪影響を及ぼします。
例えば、篠竹等の繁殖力が極めて強い植物が遊休農地内に繁殖していたとします。何の対策もせずに放置していた場合、周辺の農地まで浸食されてしまうでしょう。このように、農地の潰廃は連鎖反応的に発生するのです。周辺農家は自己の農地を自衛するため、いつかは物理的な対処を取らなけれなりません。
そこで、周辺に遊休農地があり自己の営農に支障がある場合、農業委員会に申し出て適切な措置を講ずべきことを求めることが出来ます。
農業委員会は当該申出があったときは、調査その他の適切な措置を取ることが義務付けられています。
【根拠法令:農地法第31条 1項及び2項- Wikisource】
ちなみに完全に余談ですが、当事務所の隣家は空き家となっているため、繁殖した野草が塀を越えて侵略してきています。
野生植物の成長は凄まじいものですね。
【当事務所を侵略する謎の植物】
遊休農地である旨の通知・公告
農業委員会からの指導があり、相当期間を経過しても利用増進が図られない場合には、当該農地の所有者に対して遊休農地である旨を通知されます。
なお、その農地で所有権以外の権利で使用・収益をする者がいる場合は、その者及び所有者の双方が通知の対象となります。
また、農業委員会が過失なく遊休農地の所有者等の所在を知りえない場合は、その旨は公告されます。
農業上の利用に関する計画の届出
遊休農地である旨の通知等を受けた当該農地の所有者等は、通知等があった日から起算して6週間以内に農業上の利用に関する計画を農業委員会に届け出る義務が生じます。
【根拠法令:農地法第33条 1項- Wikisource】
なお、当該届出は疾病等の事由で6週間以内に提出できない場合は特別な理由として遅延が認められます。
特別な理由がないにも関わらず利用計画を提出しない場合
通知等を受けた後、正当な理由なく期限内に利用計画を提出しない場合、相当な期限を定めて農地の利用増進を図るための措置を講じることを勧告されます。
この他、利用計画を提出したが内容が不十分であったり、提出した計画通りに利用増進が行われなかった場合も勧告がされます。
この勧告がされた場合、農業委員会は対象者に対して勧告に基づいて講じた措置について報告を求めることができます。
逃げ得は許さない強い姿勢が垣間見えますね。
遊休農地の所有権移転または貸借権の設定に関する協議
再三の通知・勧告を無視した場合、いよいよ農地を没収する段階に入ります。
農業委員会は当該農地の所有等を希望する特定農業法人等のうち、権利移転等の協議を行う者を指定します。
指定を受けた者は速やかに指定を受けた旨を当該農地の所有者に通知します。
その通知があった日から6週間以内に権利移転等に関する協議が開かれます。当該農地所有者は正当な理由が無ければこの協議を拒むことはできません。
すなわち、この段階まで進行した場合、農地は強制的に徴収てしまいます。
残念ですが自業自得と言えるでしょう。
【根拠法令:農地法第35条- Wikisource】
最後に
今回は遊休農地に対する対処について解説しました。
現代では営農者の高齢化が進み、従来通りの営農が難しい場合も散見されます。
適切な管理ができなくなった農地は潰廃が進んでしまうため、一度、農業委員会に相談してみましょう。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせフォームからいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)