農地転用に関する都市計画法と農地の種類
都市計画法と農地の種類は密接な関係があります。この都市計画区域の種類によっては農地転用の難易度は大きく異なります。
都市計画法とは、都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的として定められた法律です。
【根拠法令:都市計画法第1条】
この法律において、農地転用に特に関連する事項は「市街化調整区域」と「市街化区域」の区分です。
都市計画法の市街化調整区域とは
市街化調整区域とは、市街化を抑制する区域です。
この区域内では自然環境保全のため市街化が抑制され、建物の建築が制限されています。
市街化”調整”区域という名称ですが、実態は市街化”禁止”区域と見るのが適切です。
その地域に居住されている方々に気を遣って”調整”という表現がされているのです。
この地域では原則として開発行為が禁止されており、一部の例外のみ許されます。
当然ですが、農地転用においても厳しい制限が科されます。
例えば、農地を農地所有者の居住する住居を建築するために転用する場合や、農業用倉庫を建築する場合等以外は転用は難しいです。
この地域内の農地を売買する場合は、農地法に基づく許可申請が必要です。
都市計画法の市街化区域とは
市街化区域とは、現に市街化が発展している区域です。また、今後10年以内に市街を促進すべき地域も含まれます。
この地域は市街化を促進すべき地域であるため、農地の転用には許可が不要となります。
ただし、許可が不要となるだけで、この場合は届出が必要となります。
届出は許可よりもハードルが低く、書類の数も少なく相対的な難易度が下がります。
ただし、難易度が低いとはいえ流石に滅茶苦茶な内容の届出をしても受理はされません。
例えば、農地の売買で譲受人を胎児とする届出書を提出した場合はどうでしょうか?
そうですね。
当サイトの読者の方であれば、親の顔よりも見慣れた条文が頭をよぎったことでしょう。
胎児は相続、遺贈、不法行為の損害賠償の場合にしか権利の主体になることはできません。
【根拠法令:民法第886条(相続)、民法第721条(損害賠償)、民法第965条(遺贈)】
残念ながらこの場合は却下されるでしょう。
都市計画法と農地の種類により固定資産税の評価額も異なる
また、許可等の難易度以外にも、税制面でも大きな差があります。
市街化区域内の農地は、生産緑地地区の指定を受けた場合を除き、周囲の宅地と同基準の評価・課税がなされます。
農地の保有に対する税金
(画像出典:農林水産省HP)
このように、市街化地域と市街化調整区域では最大100倍以上の税額差があります。
さらに、これに加えて都市計画税も賦課されます。
したがって、この場合は農地を譲渡・相続する際に贈与税や相続税を検討する必要も出てきます。
ただし、市街化調整区域の農地であっても、都市部沿いや幹線道路沿いの農地は相続税や贈与税の評価額が非常に高額になる場合があります。
これは、日本の土地の評価方法は「路線価方式」または「倍率方式」という計算方法を採用しているために起こる現象です。
簡単に解説すると「路線価方式」は道路に面する土地の価格(路線価)に基づいた評価基準です。幹線道路沿いであれば土地は高価になります。主に市街地に存在する土地を評価するための方式です。
「倍率方式」は路線価が定められていない地域です。すなわち市街化調整区域に適用される評価方法です。倍率方式は土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。
この場合でも、幹線道路沿いの農地では倍率が100倍以上というケースもあります。
このように、都市計画法と農地の種類は税制にも大きな影響を及ぼすため軽視できません。
お困りの際は農地に詳しい税理士に相談することを推奨します。
最後に
今回は都市計画法と農地の種類について解説しました。
農地を取得しようと考えられている方は、最初に都市計画区域の種類を確認しましょう。
農地転用の全ては、都市計画区域の種類の確認から始まります。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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