保安林の伐採許可とは?

保安林の伐採許可とは、森林法によって保安林に指定されている森林の伐採を行う際に必要な許可です。
【根拠法令:森林法第34条第1項,第34条の2,第34条の3,第34条の4
この許可は開発許可等とも関連する重要な許可申請です。
なお、保安林の樹木を許可なく伐採した場合、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されます。
【根拠法令:森林法197条
今回は、保安林の概要から保安林の伐採許可手続きの概要までを解説します。

保安林の伐採許可

保安林とは

保安林とは、木材生産ではなく、水源の保持・土砂災害の防止・生活環境の向上等を目的とする森林です。
この保安林は都道府県知事または農林水産大臣によって指定されます。
指定される際に考慮される事項としては、上記の公共的目的を達成できるかどうかについて判断され、樹木の種類等は関係ありません。
この保安林に指定されると樹木の伐採は厳しく制限されます。
また、一度指定されると農振地域内の農地のように除外することは極めて困難です。
ただし、保安林内の樹木であっても正式な手続きを踏めば伐採すること自体は可能です。

保安林に指定されているかどうかの調べ方

保安林指定されている森林かどうかの調べ方で最も簡単なものは土地の登記簿を参照することです。
ほとんどの保安林は地目が「保安林」となっています。
しかし、ごく稀に地目変更がされていない場合があります。
その場合は、役所の窓口で保安林台帳を閲覧して確認することが出来ます。残念ながら保安林台帳は令和5年現在ではネット公開されていません。
また、メールやFAXでの問い合わせも対応していない役所がほとんどであるため、所轄の役所に直接足を運ぶ以外に閲覧する手段はありません。
保安林台帳は手数料等を支払うことなく、誰でも無料で閲覧可能です。
ただし、保安林台帳で森林を調べる際は対象の森林の地番が判明していなければ調べることが出来ません。まず先に不動産登記簿を取得することを推奨します。
なお、保安林台帳によく似たもので、「森林簿」という物があります。こちらは森林所有者の個人情報が含まれるため、原則として所有者本人または所有者本人から委任を受けた代理人でなければ閲覧できません。役所で閲覧申請をするときは間違えないようにしましょう。

保安林の伐採許可に必要な書類

保安林の伐採許可に必要な書類は以下の通りです。

  1. 許可申請書
  2. 立木の伐採に係る森林の位置図及び区域図
  3. 法人の登記事項証明書(申請者が法人の場合)
  4. 代表者の氏名並びに規約その他当該団体の組織及び運営に関する定めを記載した書類(申請者が法人以外の団体の場合)
  5. 住民票の写しもしくは個人番号カード(表面)の写し(申請者が個人の場合)
  6. 他法令の許認可等の処分に係る申請の状況を記載した書類(別の法律で許可を要する場合)
  7. 申請の対象となる森林の登記事項証明書
  8. 伐採する権原を有することを証する書類(契約書など)
    これは申請者が申請の対象となる森林の土地所有者でない場合に必要です。
  9. 隣接森林所有者と境界の確認を行ったことを証する書類
    これは客観的に境界が明らかである場合は省略できます。
  10. その他知事が必要と認める書類

以上です。農地転用等の許可と比べると意外なほど書類数は少ないですね。
また、この他に伐採完了後に完了届を提出する必要があります。

保安林伐採許可申請書の作成要領

前述の申請書類のうち、実際に申請者が作成しなければならないのは申請書と図面類だけです。他は全て既存の資料を収集するだけですね。解説は省略します。
また、図面についても特に解説の必要は無いと思いますので、申請書の作成要領について解説します。

申請書の記載事項

申請書の記載事項は以下の通りです。(広島県の場合)

  1. 申請日
  2. 許可権者
  3. 申請者の氏名、住所等
  4. 保安林指定の目的
  5. 森林の所在場所
  6. 森林所有者
  7. 伐採方法
  8. 伐採する樹木の樹種、年齢
  9. 伐採面積及び材積
  10. 伐採の期間
  11. 森林経営計画の有無

上記のうち、7・8・9・11について解説します。
・伐採方法には皆伐か択伐のどちらかを記載します。皆伐は伐採区域の全樹木を伐採することです。択伐は伐採区域の一部の樹木を伐採することです。
・伐採する樹木の樹種や年齢については、先述した森林簿に記録されているので確認しましょう。
・材積については、簡単に言えば伐採する樹木の体積(単位:㎥)です。当然ですが正確な数値を算出することは不可能に近いため、森林簿に記載されている樹種・樹齢を元に専用の計算式に当てはめて概算値を算出します。
・森林経営計画の有無については、森林所有者に直接確認するか、役所に確認を取ります。なお、森林経営計画の有無は伐採許可に一切の影響を与えません。

最後に

保安林の伐採許可について今回は解説しました。
この許可は林業従事者以外はなかなか挑む機会がない許認可なのではないでしょうか。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が保安林伐採許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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