農地の譲受人の世帯員等とはどこまで含まれるか?
農地を売買等する場合、農地の譲受人の世帯員等を申請書に記載する必要があります。
(3条許可の申請書の書き方についてはこちらの記事を御参照ください。農地法第3条申請書の書き方【広島市】)
これは、農地の譲受人が確実に農業ができるかを耕作能力の有無をもって審査しているためです。
農業という事業は基本的に一人では完結できません。複数人の作業力が必要です。
とはいえ、ほとんどの農業事業者は法人ではなく個人事業主です。これは、家長を事業主として家族も含めて農業に従事している形態が多いことを現しています。
そのため、農地の売買等では譲受人の世帯員等の人数も耕作能力に加算して良いことになっています。
耕作能力の有無は農地を売買等するうえで許可が認められるかどうかを左右する重要な要素です。
もし、耕作能力の無い者に農地を譲渡されると、結果として農地が荒廃してしまいます。
さて、ではこの世帯員等とは、どこまでの続柄の人間が含まれるのでしょうか?
今回は、「農地の譲受人の世帯員等」の定義について徹底解説します。
目次
農地の譲受人の世帯員等に含まれる人間の範囲
農地法上、世帯員等とは以下の定義がされています。
この法律で「世帯員等」とは、住居及び生計を一にする親族(…)並びに当該親族の行う耕作又は養畜の事業に従事するその他の二親等内の親族をいう。
【根拠法令:農地法 第2条2項】
これだけだとイメージがしにくいため、分かりやすく家系図で説明してみましょう。
さて、このような家族構成の場合、どこまでが世帯員等に該当するのでしょうか。
以下、Aを農地の譲受人として解説します。
まず、BDEFが世帯員等に該当するのは明らかです。住居及び生計を一にする親族に該当します。
次に、HIGについて検証します。
これは世帯員等には含まれません。当該親族の行う耕作又は養畜の事業に従事する(…)親族に該当しません。
問題はCです。
Cは仕送りで生活をしているため生計を同一にしているとは言えそうです。しかし、住居を同一にするという条件を満たしていません。
Cが世帯員等に該当するかどうかについては、農地法第2条を更に深堀りする必要があります。
農地法第2条の住居及び生計を一にする親族には以下の例外規定があります。
- 疾病又は負傷による療養
- 就学
- 公選による公職への就任
- その他農林水産省令で定める事由
Cはこの第2項の「就学」に当てはまります。
そのため、結論としてはCも世帯員等に含まれます。
つまり、Aの世帯員等はBCDEFの5名となります。
Cが譲受人となる場合はどうなるか
さて、次はCが農地の譲受人となる場合はどうなるでしょうか。
この場合は、Aが譲受人となる場合とは異なり、遠方で生活するABDEFを世帯員等に換算することはできません。
なぜなら、世帯主Aから見てCは住居及び生計を一にする親族の例外規定の「就学」に当てはまりますが、Cから見てABDEFは例外規定のいずれにも該当しないためです。
すなわち、譲受人の世帯員等とは、現実に農地の所有者となる者を基準として判断されます。
また、Cは現に大学生として就学中の身であり、専業で農業に従事することは到底困難です。このため、Cが譲受人となる3条許可(届出)は不許可となる可能性が極めて高いと言わざる負えません。
Gが譲受人となる場合はどうなるか
さて、次にGが譲受人となる場合について検証します。
この場合、もしGがHIと同居かつ生計を一にしていた場合は、HIを世帯員等に換算することができます。
ただし、もしHIと同居していないのであれば、当該家系図内で世帯員等に換算できる者は一人もいません。
まとめ
農地の譲受人が農地を売買する際には、その世帯員の情報を申請書に記載する必要があります。これは、農業を行う能力、すなわち耕作能力の有無を審査するためです。ほとんどの農業事業者は個人事業主であり、家族全員で農業を営むケースが多いため、譲受人の世帯員も耕作能力の一部としてカウントされます。
農地法における「世帯員等」の定義は、同居かつ生計を一にする親族および二親等内の親族が該当します。さらに例外として、学生や療養中の者も「世帯員等」として認められる場合があります。ただし、譲受人となる者が実際に農業を行う能力を持たない場合、申請が不許可となることもあります。
農地の譲受における世帯員等の定義や範囲は、耕作能力の審査において非常に重要な要素です。家族の形態や生活状況に応じて、その範囲が変わるため、正確な理解と申請が求められます。農地を譲り受ける際は、自身や家族の状況をしっかりと確認し、申請書を正確に記入することが成功の鍵です。
最後に
今回は農地の譲受人の世帯員等の範囲について解説しました。
この算定方法は条文上の書き方がシンプル過ぎるため、なかなか理解するのが難しいですね。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
【参考文献:農地法許可事務の要点解説(宮崎直己)27頁】
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせ方法からいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)