農地に地上権を設定する場合は3条許可か5条許可か?

農地には地上権を設定することが可能です。
これは農地法に明記されています。
【根拠法令:農地法第3条
条文上、農地に設定できる権利は所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借権、貸借権です。
3条許可で代表的なものは所有権の移転ですね。売買契約等によって農地の所有者そのものが変更される場合がこれに当たります。それ以外にも、農地に賃借権等の何らかの権利を設定する場合も3条許可に該当します。
また、5条許可とは権利の移転等と農地を農地以外の地目に変更することを同時にする場合の許可です。
では、農地に地上権を設定する場合、3条許可と5条許可のどちらに該当するのでしょうか?
今回は、この問題について徹底解説します。

結論:5条許可になる

最初に結論をいうと、5条許可です。
「え?どう考えても3条じゃないの?」と思われた方も多いでしょう。
これは、地上権という権利の性質から先に解説する必要があります。

地上権とは

地上権とは、他人の土地を工作物または竹木を所有するために使用する権利です。
【根拠法令:民法第265条
既に法律上で目的が明言されています。地上権は「工作物」と「竹木」を所有することが最終目的です。
耕作をする目的で地上権を設定することはできません。耕作を目的とする場合は永小作権になります。
ここでいう「工作物」とは、家屋、倉庫、道路などが該当します。
これについては農地の地目変更をしなければならないことは明確でしょう。
たとえ農業用倉庫を建築する場合であっても、部分的な地目変更は必要です。
地目変更を伴う場合は4条許可または5条許可になります。
ただ、4条許可は権利変動を一切伴わない純粋な地目変更の場合のみが該当します。地目変更に併せて農地に何らかの権利を設定する場合は5条許可になります。

竹木所有の目的の場合はどうか

では、もう一つの目的である「竹木」の所有についても検討してみましょう。
まず、ここでいう竹木とは「耕作目的以外の植栽」であると学説上解釈されています。
これは、耕作目的の植栽を地上権の目的に含有すると、永小作権の存在意義が無くなるからです。
このため、やはり竹木所有目的であっても3条許可の取得は難しいことになります。
【参考資料:農地法読本第5訂版(宮崎直己)、農地法許可事務の要点(宮崎直己)、民法1第4版(我妻榮、有泉亨、川井健、鎌田薫)】

論点のまとめ

上記の論点をまとめると、このようになります。

結論:地上権設定を目的として農地法3条許可は取得できない。5条許可が相当である。
理由:地上権の目的である「工作物」「竹木」の所有は耕作といえず、必ず地目変更を伴うから。

このため、農地法第3条1項は農地に設定できる権利を列挙しているだけであり、必ずしも列挙された権利全てが3条許可に該当することを示しているわけではないことが分かります。

また、農地に地上権や永小作権を設定するということ自体があまり現実的ではありません。(営農型太陽光発電施設設置のための区分地上権設定ならあり得ます)
それよりも容易に設定できる使用貸借権、貸借権が存在するからです。
わざわざ地上権や永小作権を選択するメリットは少ないでしょう。
強いて言うならば、地上権は設定者の許可を得ずに自由に他人に譲渡できます。しかし、この場合も農地法の許可を省略することはできません。また、地上権は存続期間を永久とすることも可能ですが、賃借権も期間の更新が可能なので実質的な差異はほとんどありません。永小作権に至ってはそれらのメリットすらありません。
しかも、賃借権は通常は登記しなければ権利を取得した第三者に対抗することは出来ませんが、農地法の特例により、引渡しを受けただけで第三者に対抗することが出来ます。
【根拠法令:民法第605条農地法第16条
ただし、使用貸借権により農地を借用した場合は、借用地に掛かる固定資産税の支払い義務は借主に移転することに注意が必要です。
【根拠法令:民法第595条
【参考資料:民法第10版(我妻榮、良永和隆)】

最後に

今回は農地に地上権を設定する場合について解説しました。
こうやって整理すると、農地法を理解するためには前提として民法の知識もある程度は必要だということが分かりますね。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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