農地転用に必要な準備
農地転用に必要な準備は多種多様にわたります。
最終的には役所の担当者に相談するのがゴールです。しかし、それに至るまでに揃えるべき情報が沢山あります。
今回の記事では農地転用のために必要な準備について解説します。
目次
隣地との境界を明確にする
農地転用をする場合は、隣接地が農地のであれば隣地所有者の同意が必要です。
なぜなら、農地を転用することにより、周辺の土地にも影響を及ぼすからです。
具体的には、整地をすることにより土地が雨水を浸透する作用が弱くなります。結果として土砂災害発生のリスクが向上することが考えられます。また、隣地が田であれば水路を塞いでしまう可能性もあります。
なので、「ここからここまでの範囲を転用させて下さい」という事前調整は必須です。
しかし、そもそも隣地との境界が不明確な場合があります。
このような場合に当事者同士の口約束で境界を決めるのは危険です。後々に土地を売買する際のトラブルの原因となりかねません。
なので、境界が不明な場合は確定測量を実施して境界を明確にする必要があります。
確定測量は土地家屋調査士の仕事です。期間は約1~2か月程度、費用は100㎡で30~40万円程度が相場のようです。
また、確定測量をする際には隣地所有者が立ち会う必要があります。事前に隣地所有者とよく調整しておきましょう。
隣地所有者が所在不明の場合
上記の理由があるため隣地所有者が所在不明の場合、確定測量が計画通りに進みません。こんな時は家庭裁判所に申し立てることで不在者財産管理人を選任することが出来ます。【根拠法令:家事事件手続法第145条】
不在者財産管理人が選任されると、不在者の代わりに確定測量の立会や境界画定の同意をしてくれます。
ただし、不在者財産管理人を選任するためには、まずは隣地所有者を捜索し、その結果、所在不明者であることを証明しなければなりません。
これは、隣地所有者に対して郵便物を発送して不在返送されたものや、警察署長が発行する家出人届出受理証明書を提出することで証明できます。
また、不在者財産管理人を選任する場合、申立人がその費用を負担します。
すなわち、農地転用の申請者持ちです。およそ費用は30~50万円が相場のようです。
なかなか手痛い出費ですね。農地転用に必要な準備にも色々とお金は掛かるのです。
周囲にインフラが完備されているか確認する
転用しようとする農地の周囲にインフラが完備されているかは重要な要素の一つです。
転用しても電気も水道もなければ生活は出来ません。
まず、電線が通っていない場所は論外です。これはどうしようもありません。
また、上水道は近隣の水道管から引いてくることは出来ます。しかし、この費用は申請者持ちです。
下水道が整備されていない場合、浄化槽を設置することで解決ができます。この場合も隣接地に排水が漏れないように排水できる道路側溝があるのかを確認する必要があります。
また、自治体によっては雨水の排水に関する計画書の提出を求められることもあります。排水計画は綿密に作成しましょう。
事前に工期を明確にする
農地転用の申請はいつでもできるわけではありません。明確に工期が決まっていて、許可取得後は直ちに工事に着手する必要があります。
これは、役所に工事の進捗を報告する必要があるためです。
そのため、遅くとも許可取得後3カ月以内には工事を開始することがベターです。
「いつかは家を建てたいので事前に許可を取得したい」ということは出来ないので注意が必要です。
転用する面積を明確にする
農地転用が認められるのは、転用の目的に対して必要最小限の面積のみです。
このため、「すぐには使わないが、いつか駐車場にしたい」という理由で必要以上の面積を転用することはできません。
役所の窓口で相談するために準備すべき資料
登記簿謄本及び公図
登記簿謄本は法務局で全国どこの土地の情報でも入手することが出来ます。
手数料は1枚600円、公図は1枚450円です。
公図とは土地の面積及び境界が記載されている地図のようなものです。
なお、現在はネットでも閲覧することができます。この場合は公的な証明力はありません。しかし、窓口での相談用資料ならばこちらでも全く問題ありません。
手数料は1枚334円、公図1枚364円です。ネット取得のほうが若干安いですね。
登記簿謄本を取得するためには地番の確定が必要
登記簿謄本を取得するためには、地番をまず明確にする必要があります。
地番は固定資産税の納税証明書や市町村に備え付けられた名寄帳を参考にして調べられます。
また、この納税証明書や名寄帳の写しも相談用資料として有効です。これは他に転用の候補地となる土地があるかどうかの確認資料として活用できます。
住宅地図
ゼンリンなどの住宅地図もあったほうがいいでしょう。
これは転用しようとする農地の周辺の開発程度を確認するための資料として有効です。
役所の窓口での相談で確認すべきこと
農地転用に必要な準備資料を確保した後は、いよいよ役所の窓口で相談をします。
農地転用に関する相談は役所の農業委員会や農政課で受け付けています。
まず、確認すべきことは以下の事項です。
転用したい農地のランクは何か
農地のランクが農業振興地域や甲種農地または第1種農地である場合は転用はほぼ不可能です。
できたとしても一時的な転用のみ認められ、期限が過ぎた場合は原状回復しなければならない場合がほとんどです。
農地のランクについては今後、更に深堀りして解説しようと思います。今回は主題ではないため、次に行きます。
周辺の開発の程度
転用しようとする農地の周辺が既に宅地になっている場合は転用が容易になります。
しかし、周辺が農地に囲まれている場合は周辺の農地に悪影響を与えることがあるため、転用の難易度が上がります。
市町村独自の条例はあるか
これは役所に直接問い合わせなければなかなか触れる機会がないため、相談時に必ず確認しましょう。
法律上は問題がなくとも、条例上の規制がある場合は、そちらもクリアしなければなりません。
土地改良区に指定されていないか
土地改良区とは、土地改良事業を実施するため設立された農家の方々の団体です。
名前に「区」と付くため場所を示しているように感じますが、あくまで組織のことを指しています。
土地改良区は農業用水の確保や農業用水路の整備等を行っています。土地改良区内に農地を所有している人は自動的に組合員になり、費用を負担しています。ただし、現在は費用の徴収が形骸化している場合もあり、自己の農地が土地改良区に属しているのか分からないケースもあります。
また、土地改良区内の農地を転用する場合は、その農地を土地改良区から除外する手続きが必要になります。
土地改良とは | 全国水土里ネット(全国土地改良事業団体連合会) (inakajin.or.jp)
市街化調整区域内ではないか
市街化調整区域内では建物の建築は厳しく制限されています。
こちらの市街化調整区域マップ (mapexpert.net)というサイトでも簡易的に全国の市街化区域を調べることが出来ます。
ただし、このサイトは国や自治体ではなく民間のサイトなので、最終的にはやはり役所に確認することが重要です。
最後に
農地転用に必要な準備は根気が必要です。
もし一人では対処しきれないと感じたならば、農地転用を専門とする行政書士に相談することを推奨します。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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