転用許可が必要な農地とは?
日本の農地は農地法という法律により転用が厳しく制限されています。通常であれば私有地は所有者が自由に譲渡したり地目変更することができるものです。しかし、農地については国家の農業生産能力確保のため法律で厳しく制限されているのです。
さて、転用許可が必要な「農地」とは何を指しているのでしょうか?
農地法では、農地を「耕作の目的に供される土地」としています。【根拠法令:農地法第2条1項】
これは、田や畑のことであり、穀物や野菜を作っている土地ということです。また、耕作は営利目的かどうかを問いません。
ある土地が農地であるかどうかは実際に現地を見て判断することが最も簡単な方法です。しかし、中には外観だけでは判別できない場合もあります。
その場合、判断材料の一つとして登記を確認することが必要です。
目次
転用許可が必要な農地かを判断する「登記」
まずは「地目」を確認する
土地の登記は法務局で手数料を支払えば誰でも閲覧することができます。
実際に耕作に供されていない場合であっても、登記上の地目(土地の使用目的のこと)が農地であれば転用許可が必要です。
なお、不動産登記法により地目は現状に合わせて変更することが所有者に義務付けられています。【根拠法令:不動産登記法第37条】そのため、現状が耕作に供されている土地はほとんどの場合は地目も田や畑になっています。
しかし、中には耕作されることなく原生林のようになっている土地もあります。
このように農地に見えない土地であっても登記上で農地であれば転用許可が必要です。
登記も万能ではない
先述した通り、地目の変更登記は土地所有者の義務です。許可を得て農地を宅地に変更した場合は、当然に地目変更手続きをしなければなりません。しかし、手続きがされないまま放置されていることもあります。なお、登記手続の懈怠は10万円以下の過料に処せられるため注意が必要です。【根拠法令:不動産登記法第164条】
そのため、登記上は田や畑であっても既に転用許可を得ている場合もあるのです。
登記上は宅地でも課税上は農地の場合もある
逆に、宅地から農地に変更する場合も地目変更の手続きは必要です。
登記上の地目は宅地でも、固定資産税の節税のため課税上で農地となっている土地も存在します。
これは、地目には登記地目と課税地目の2種類があるためです。
課税地目とは、固定資産税の算出根拠となる地目のことです。毎年送られてくる固定資産税納税通知書や、市役所等で取得できる固定資産評価証明書で確認することができます。市区町村や税務署が現地調査によって判定しており、現況に変化があれば自動的に変更されるため、登記地目と課税地目が異なる場合もあります。
このような土地も転用する場合は許可が必要です。なお、課税上の地目は本人または委任を受けた代理人等しか調べることができません。このため、特に注意が必要です。
転用許可が必要な農地には該当しないもの
宅地と一体利用されている庭等を利用した家庭菜園は農地として扱われません。
この場合、土地全体を宅地とみなします。
転用とは何か?
農地転用の「転用」とは、農地を農地以外のものにすることです。
ただし、農地転用に該当するかはケースによって個別に判断しなければなりません。
具体的には以下のような場合です。
農地を宅地や駐車場に変更する場合
これは目的そのものが大きく変更されるため、確実に農地転用に該当します。
農地内に農業用倉庫を設置する場合
農地法の特例として、以下の条件を満たした場合は農地内に農業用倉庫を建築する場合でも許可は不要です。
- 自己所有の農地であること。
- 自己の農業経営上必要な施設に転用すること。
- 面積が2アール(200平方メートル)未満であること。
ただし、この場合は許可が免除されるだけで届出が必要になります。
農地内に農業用車両の駐車場を設置する場合
耕作を行う上で農地内に車両や機械が進入することは避けられません。そのため、農地内に一時的に車両等を駐車する行為は農地転用許可は不要です。
しかし、この場合は耕作のために必要な限度に限られます。
例えば、農地内に作業用の軽トラを1~2台駐車させるのであれば耕作利用として認められそうです。
ですが、これがセダンやRV車だったり10台や20台の規模であればどうでしょうか。さすがに「これは農地を駐車場として運用しているな」と役所の担当者に疑われることは目に見えています。ただし、合理的に必要性が説明ができるのならば問題はありません。
また、駐車スペースに砂利を入れるのは転用に当たるのかという問題があります。これは駐車に必要な最小限の範囲内であれば認められそうですが、事前に役所の担当者と相談する必要があるでしょう。
農地から農地への転用
田を畑に変更する場合は田の転用ですが、農地転用許可は不要です。
ただし、周囲の農地に影響を及ぼす可能性があるため、事前に役所の担当者と相談が必要です。
また、畑に果樹を植える、花や植木の栽培をする等の転用も農地転用許可は不要です。
最後に
農地転用許可は非常に奥が深く難解です。
このため、最初は理解がしにくいものですが、根気よく法令等を確認し、役所の担当者と相談を進めることで許可を取得することが出来ます。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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